読書の記録70 「社会的うつ病」の治し方 斎藤環 著 2018/06/07
本書は数多くのひきこもりを「治し」てきた精神科医・斎藤環氏による「新型うつ病」と呼ばれる「軽症うつ」への「治療」の仕方を記述した本である。そして、その「軽症うつ」を「社会的うつ病」と呼ぶことにしたが、さしあたりそう名付けたくらいの意味である、それは従来の内因性うつ病との違いを明確にするためにである。
斎藤環氏は、薬物投与をすれば改善できると判断する安直な医師ではなく、「治療」の中心は「環境調整」が重要だという立場である。それには家族がなによりも大きな役割を果たすのである。
本書の人薬とは、想田監督の「精神」という精神障害者の記録映画の舞台の施設で使われた言葉である。
ちなみに、日本の精神医学会は、国際的にはDSMで診断名を書き、国内では、笠原-木村の分類法も使う、笠原-木村の分類法では「対人恐怖症」という診断名はあるのだが、国際的な場で使われるDSMでは「対人恐怖症」の診断名はなく、「社交不安障害」と診断される、ということも本書で知った。
とても誠実な本です。必読の一冊。